(注)1,戒壇と戒律
 @戒壇
 仏教僧に戒を授ける式場。戒を授けるため壇を築くから「戒壇」という。インドでは釈尊の在世時代に祇園精舎に造られたといわれ、中国では249年から255年頃に洛陽に建立されたのが始まりといわれるが、律宗を盛んにした道宣の時に流行した。日本では唐僧鑑真の来朝のとき、天平勝宝6年(754)東大寺大仏殿前に戒壇を建立して菩薩戒を授けたのが最初。ついで唐招提寺にも築いた。下野の薬師寺、筑紫の観世音寺にも建てられ、東大寺の戒壇とともに本朝(わが國)の三戒壇と呼ばれた。その後、平安時代に最澄が大乗戒を唱え、比叡山に「円頓戒壇」を設立した。しかし、延暦寺と三井寺との間に争論が生じたので、三井寺の僧侶のために「三摩耶戒壇」を建立した。日本の戒壇は三段で、壇上には多宝塔を安置している。         「ブリタニカ国際大百科事典」
A戒律
 一般的に道徳上の徳目や宗教的修行をするうえの禁戒として考えられる。仏教では、「戒は規律を守ろうとする自己の内面から起こった心のことをいい、律とは外部から律せられる規範」と考えられる。仏教教団の秩序維持のため、正法を護持するために規範が設けられたのであるが、それを自主的に守っていこうとする心が戒である。従って戒と律とは同時に行われるものである。
 他の宗教にも戒律に類するものはみられ、たとえばユダヤ教の「十戒」・キリスト教の「山上の垂訓」・イスラム教の「律法」などがある。